食品のおいしさを引き出すフレーバー
食のおいしさは、人間の五感のうち、当たり前のように味覚で感じるものと思っていませんか。味覚は舌表面にある味蕾(みらい)で感じる感覚で、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味が基本の「五味」とされてきました。最近の研究では第6の味覚として、脂肪味が注目されています。
しかし、食の味わいを考えるとき、これら六つだけでは説明できません。風邪などで鼻が詰まっていると味が分からないことはありませんか。口から鼻へ抜ける空気とともに運ばれ、嗅覚で感じ取る香りも、味わいには大きく影響しているのです。
食の味わいに重要な役割を果たしているものに香料があります。香料は天然香料と合成香料に分類されますが、香水、洗剤、芳香剤などに用いられているものというイメージが強いと思います。これらの香料をフレグランスといいます。
一方、食品にも用いられる香料がフレーバーです。他の食品添加物と同様、安全性の確認が必要で、フレーバーの合成香料はほとんどが天然香料物質や食品成分と同一のものです。フレーバーには、食品の加工時に損なった風味を補ったり、食品素材が元々持っている風味を強めたり、食品素材由来の好ましくない風味を抑え、好ましい風味に変えたりする役割があります。飲料、菓子、歯磨き剤、インスタント・レトルト食品などに広く用いられています。
フレーバーの進化と適用技術の向上により、今日の食品のおいしさがより一層、引き出されているといえるでしょう。