室内の「かおり」「臭気」も多様に

生活環境にはさまざまな「におい」が存在します。屋外でも室内でも、心地よい香りや不快な臭気を感じることがあります。朝、家を出るときに気にならなかった自宅のにおいが、夕方帰宅したときには気になることもあるのではないでしょうか。自宅に長く滞在することで、においに鼻が慣れて感じなかったものが、外出によってリセットされて感じるようになったためです。
住宅のにおいの要因には、建物の造りや生活様式の変化が関係しています。近年、住宅の高気密化が進み、換気が義務付けられているものの、においは極低濃度でも感じるため、対策としては十分でないことも多いのです。核家族化、単身世帯の増加に伴い、住宅に人がいない時間が多くなり、窓や扉を開ける時間が減ったことなども、においがこもりやすい要因の一つです。
食材の変化や室内でのペット飼育の増加も影響しています。油脂類、スパイス類などのさまざまな調味料を使用するようになり、庭や玄関などを主な居場所としていたペットも、室内での飼育が多くなりました。排せつ物やペットフードのにおいが室内に広がることもあります。
本連載では、こうしたにおいの正体と対策を中心に、人がにおいを感じる仕組みやにおいの役割、香りの文化と歴史、食とにおい、住宅のにおいなどを紹介します。なお、良いにおいを「香り」、不快なにおいを「臭気」、臭気よりも強い嫌悪を感じるにおいを「悪臭」、人が感じる香りから悪臭までを総称して「におい」と表記します。