火の発見とともに使われ始める

香りは、火の発見とともに使われるようになったとされています。草木を燃やす中で、煙と一緒に立ち上る香りに気付き、神秘的なものとして宗教儀式に用いられるようになりました。
香りのもととなる香料の歴史は、紀元前3000年ごろのメソポタミア、古代エジプトまでさかのぼります。レバノンスギをたいて香りを神に捧げ、白檀、ニッケイ、イリスなどをミイラの防腐剤として使用。また、防臭効果を利用するため、部屋を香りで満たし、香油を体に塗り、衣料に香りを染み込ませて楽しんでいました。やがてギリシャ、ローマに伝わって、香りの原料を蒸留した精油が作られます。十字軍遠征によって、麝香など東洋の香料がヨーロッパにも持ち込まれ、ベニスの商人たちにより、広く取引されるようになりました。
16世紀には、皮革産業が盛んだったフランスのグラース地方に皮革の消臭剤として香料が持ち込まれ、温暖な気候が多くの香料の原料植物の栽培に適していたこともあり、香料生産の中心として発展しました。香料をアルコールに溶かした香水は、14世紀に使用されていたとされる、ハンガリーウォーターが起源の一つと言われます。その後、香水はイタリア・フィレンツェのメディチ家から花嫁がフランスへ輿入れする際、持ち込んだことで世に広まりました。
19世紀には、天然香料の分析が進み、合成香料が製造されるようになりました。現在は香料の利用の幅が広がり、用途に応じて気軽に楽しめるようになったのです。