危険を知らせたり、味わい与える
人間は、外界からの情報の大半を視覚と聴覚から得ていて、嗅覚から得る情報はわずかだといわれています。嗅覚は原始的な感覚とされていますが、においには多くの重要な役割があります。原始時代においては、においで危険を察知し、身を守ってきました。においには、危険を知らせる役割があるのです。
現代でも体調を崩す恐れがある腐敗した食品は、においを嗅いで察知できます。無臭の都市ガスに、においを付けてガス漏れを知らせています。また、伝統医学の診察法の「聞診」では、声の調子、呼吸音を聞くだけでなく、体臭や口臭などを嗅いで診断します。古くから病気や体調により体臭が変化することは知られていましたが、近年では、皮膚ガスや呼気など人体から発生する生体ガスを計測し、病気の早期特定を可能にするセンサーなどの研究開発も進んでいます。
普段、あまり意識することはないかもしれませんが、日々の生活の中で料理の、においからおいしさを感じたり、木々や草花のにおいから季節の移り変わりを感じ取ったりしているのではないでしょうか。旅行先では、その土地や街のにおいを感じることもあるでしょう。環境省は、かおり風景100選として、全国100カ所を選定しています。素晴らしい景色や街の様子を見たり、音を聞いたりすると同時に、その空間ならではの、においが存在します。においには、料理や景色などに独特の深い味わいを与える役割もあるのです。