時代とともに対応も変化
生活環境の「におい」といえば、「香り」よりも「悪臭」が身近かもしれません。嗅覚は、腐敗や火事などから身を守るセンサーとしても私たちに備わっているからです。衛生状態が良くなかった一昔前は、家庭内にも、ごみ臭やし尿臭などがありましたが、1960年代の公害の時代には、工場が原因の悪臭や、都市化の進展による畜産業のにおいへの苦情が増加していきました。
そのような中、悪臭は典型7公害の一つとされ、71年には悪臭防止法が制定。その後、悪臭対策の実施や、工場などの廃業や移転により、93年まで悪臭苦情件数は減少していきます。ところが、94年に苦情件数は再び増加に転じます。廃棄物の野外焼却のほか、サービス業、個人住宅・アパートなどからのにおいなどが苦情対象になってきたのです。
悪臭防止法の規制物質の変遷をみても、制定時には、アンモニアや硫化水素など、苦情対象の主成分である5物質が規制対象でしたが、苦情内容の変化とともに発酵臭や焦げ臭の原因物質などが追加され、現在では22物質が指定されています。また、90年代から目立ってきた悪臭の問題には、これまでの原因物質規制だけでは対応しきれない場合が出てきました。95年、人間のにおい感覚に基づいた、複合臭に対応できる規制を取り入れる改正が行われたのです。
時代とともに変化する悪臭問題に対応すべく、新たなにおい関連の資格も誕生しています。次回はにおい関係の資格について紹介します。