暖かさを感じるかんきつ系の香り
このシリーズでは、においの感じ方や生活環境のにおい問題、室内の臭気対策など、においと嗅覚を取り上げて紹介してきましたが、通常、人が身の回りの環境の良しあしを判断するときには、嗅覚からの情報だけでなく、他の感覚も働かせて情報を取り込み、総合的に判断しています。
例えば、ある部屋に滞在している場合です。その部屋で感じるにおいだけでなく、暑さ・寒さ、潤い・乾燥感、明るさ・暗さ、騒がしさ・静けさ、内装や家具の色や材質など、視覚、聴覚、触覚から得られる情報もその部屋の居心地に影響を与えていることでしょう。
また、においが、嗅覚以外の感覚にも影響を及ぼし、身の回りの環境に対する評価が変わることもあります。例えば、ミント系の香りは涼しく感じさせ、かんきつ系の香りには暖かく感じさせる効果があるといわれています。色にも赤や黄、オレンジなど暖かさを感じさせる暖色系と、青や青緑など寒さを感じさせる寒色系があるように、においも暑さ寒さの感覚に影響を与えることがあるのです。
日常生活において、においのみをコントロールすることで快適な生活環境が創造できるわけではありません。におい以外のさまざまな環境要素も適切にコントロールする必要があります。他の感覚への影響も考慮してにおいの効果を取り入れることで、においは、より豊かな生活環境の創造へとつながっていく可能性を秘めています。(おわり)