令和5年6月1日に開催された公益社団法人・においかおり環境協会総会において、理事に選任され、その後に開催された令和5年度第2回理事会において、会長に選任された小峯裕己です。
2016年度から今まで7年間会長職に就いていましたが、引き続き、令和7年度の総会まで会長を務めさせて戴きます。
当協会の起源は 、工場その他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭防止対策に関する調査研究を行う任意団体として、昭和44年12月に設立された悪臭公害研究会です。昭和46年6月に公布された悪臭防止法の下、悪臭公害の解決を目指して活動を推進し、当時の環境庁におけるにおい悪臭防止行政の推進に対する一翼を担って参りました。
その後、昭和62年4月には環境省所管の法人許可を得て、社団法人臭気対策研究協会へ移行致しました。
さらに、平成5年に制定された「環境基本法」に基づく環境政策が、それまでの公害による等の被害の防止や自然環境の保全上の支障の防止に留まらず、健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受し、将来に継承することを基本理念として保全を図る事まで展開されることになったことを受け、本協会におきましても、平成15年44月には、積極的に良好なかおり環境を創造し、快適な生活環境を保全するとともに、屋外空間だけでなく建築物室内空間も対象とするよう、事業内容の見直しを行い、名称も社団法人におい・かおり環境協会に名称を変更致しました。
平成23年4月には、公益社団法人としての認定を受け、におい・かおりの環境問題全般に関して、社会的に貢献できる事業を強化致しました。
最近、都市部では、悪臭苦情の対象となる事業所が、大規模な工場等から焼き肉店やラーメン店等の飲食店を始めとする小規模な事業所へと移行しています。また、地方では、畜産農場における一戸あたりの飼育頭数の増加、畜産農家の存在する地域に達する住宅のスプロール化により、畜産関係の悪臭問題は深刻化するなど、いまだ課題が残されています。また、コンポストの生産施設から発生する悪臭も苦情が長期化する傾向もみられます。
一方、私達の身の回りでも、数多くのにおいに関わる問題が顕在化しています。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、ケアハウスやグループホームなどの施設数が大幅に増加していますが、入居者の糞尿処理に関わる施設室内の悪臭、在宅介護による介護臭、ペット臭、カビ臭に代表される一般家庭における嫌なにおい、食品における異臭問題(オフフレーバー)、体臭や口臭に対する過剰意識などが社会的な問題となっています。香水や、合成洗剤・柔軟剤・入浴剤・防虫剤・化粧品・芳香剤などに含まれる合成香料に起因し、さまざまな健康被害が誘発される現象を言う香害という語句も、しばしば目にするようになりました。
ところで、悪臭防止法では、「臭気指数の測定について,市町村等からの委託により測定業務を担当する者で、測定の的確かつ公正な実施を確保するための国家資格」として臭気判定士の資格が付与されています。マスコミ等では、この資格の適合業務を誤解して、におい・かおりに関する原因や問題点の解明をする人物として、臭気判定士の資格を有する人物を登場させていますが、資格要件を逸脱した行為であり不適切です。
そこで、当協会は生活環境の保全と良好なかおり環境の形成に寄与することを期待して、臭気判定士資格保有者等を対象に、多様なにおい・かおり問題に対応する専門家として自由で広範囲な活動が行える者を認定・登録する「におい・かおり環境アドバイザー」制度を令和元年度に創設しました。令和4年3月31日現在、臭気判定士の免状所有者3,296名の内、「におい・かおり環境アドバイザー」講習会の受講者88名、協会への登録者は69名に留まっています。当協会としては、この資格の更なる普及拡大,並びに社会的認知度の向上を図っていく所存です。
協会が設立されて約50年経過致しましたが、解決すべき問題がまだまだ残っていると言って良い状況です。これらの問題を解決し、より快適な生活を確保するためには、教育・研究機関、地方公共団体や民間企業などから、におい・かおりに関して知見のある方々にご参画戴いただき、におい・かおり環境に関わる課題を基本から整理した上で、正しい情報を発信する必要があります。におい・かおりに対して興味を覚える方がいらっしゃいましたら、是非、当協会の会員となって戴き、色々な事業にご参画いただければ幸いです。
公益社団法人におい・かおり環境協会は、会員諸氏や社会からのそのようなご要望 にお応えし、においに関する問題の解決及びかおり環境の創造に向け、従来以上に、社会から期待され信頼される事業を積極的に推進してまいります。
今後とも、におい・かおりに関する各分野の方々のご参加、ご支援・ご尽協力を戴けますよう、お願い致します。
公益社団法人 におい・かおり環境協会 会長
千葉工業大学 名誉教授
小峯 裕己